Research Diary

ALICE実験や郡司研の研究生活の様子

2020年4月(関口)

新年度

郡司研教務補佐員の関口です。

新年度となり新たに小原くんが修士学生としてメンバーに加わりました。おめでとう!

新年度の幕開けは新型コロナ感染症の影響で在宅ミーティングでの始まりとなりましたが、我々の多くはグリッドコンピューティングシステムを使った物理解析を行っているため、幸い在宅でも研究を続けることができています。

現在ALICE実験でも世界中のメンバーが在宅研究を余儀なくされていますが、ビデオ会議システムを駆使してALICE実験では物理結果承認会議が行われている最中です。関口は陽子陽子衝突における結果の承認を目指しています。


※写真は3月終わりに撮影した理研構内の桜です。


2019年12月(清水)

ALICE-TPCのPre-commissioning

清水と関畑は11月から12月にかけてCERN研究所に滞在し、LHCのRun3に向けてALICE実験TPC検出器のPre-commissioningを行いました。GEMに印加している高圧電源を監視しつつ、TPCのA-sideを使って宇宙線の飛跡を測定しました。12月末までにA-sideのすべてのセクターでテストが完了し、1月からはC-sideでテストが行われる予定です。

帰国後、関畑は名古屋で開催されたPost QM19研究会で口頭発表を行いました。また、関畑は来年の1月から3月にかけて再びCERN研究所に滞在する予定です。

2019年11月(関口)

QM19

郡司研教務補佐員の関口です。

11月2日-9日に中国・武漢で行われたQuark Matter 2019 という国際会議に郡司、林、関畑、関口が参加しました。林、関畑はポスター発表を、関口は口頭発表を行いました。また、郡司がAPPC2019 において、招待講演を行いました。

関畑、清水はCERNに滞在してRun3に向けたTPCの準備作業を進めています。

2019年8月(清水)

郡司研M1の清水です。8月もイベントが盛りだくさんでした。

チュートリアル研究会

8/19~21にかけてチュートリアル研究会に参加しました。私のような高エネルギー重イオン衝突になじみの薄い学生に基本的概念や全体像を把握してもらう場として、数年に一度開催される研究会です。全国から数多くの研究室が参加し、郡司研からは郡司さんと林さんが口頭発表を、関口さんがポスター発表を行いました。私と同年代の学生にも質問の機会が積極的に与えられました。私にはまだまだ難しい内容も多かったですが、重イオン衝突のなかでも多種多様なテーマがあることに驚きました。

CNS Summer School

8/22~27にかけてはCNS Summer Schoolに参加しました。アジアの学生が多数参加し、原子核物理の研究者による講義が一週間にわたって行われました。学生や若手の研究者にも発表の機会が与えられ、私も自分の卒業研究についてポスター発表を行いました。英語で自分の研究を発表するのは初めてだったので、とても貴重な経験でした。

2019年7月(関畑)

ALICE Physics Week@PragueとTPC外枠の掃除

7月22-27日にかけて、チェコ共和国プラハにおいてALICE実験物理検討会が開催されました。主な内容はRun2の解析状況とRun3とその後の計画でした。私が研究しているダイレプトンの話題以外にも、検出器性能が向上し、データ量が増加することで$\Xi_{cc}$や$\Omega_{ccc}$などの多チャームバリオンが測定可能になり、ダイクォーク構造の探索とカイラル対称性の回復にも繋がる、という話題が興味深かったです。

TPCの活動としては、C sideのGEMインストールのために準備が着々と進んでいます。左図はTPCの外枠をエタノールを染み込ませた布で拭いている写真です。これからMWPCを外す予定ですが、その時にTPC内部に埃などが入るのを防ぐため事前に掃除しました。

2019年6月(関畑)

GEM-TPCのインストール準備と国際会議での発表

6月はイベントが盛り沢山でした。上旬には関畑がPHOTON2019(伊・フラスカティ)で、下旬には林がInitial Stage 2019(米・ニューヨーク)でそれぞれ口頭発表しました。

関畑はCERN研究所に滞在しており、LHC-Run3に向けたALICE検出器増強計画の要となるGEM(ガス電子増幅)-TPCのインストール準備を行っています。これらは円筒形の上面と底面に設置されます。埃などを避けるためクリーンルーム内で作業しており、全員が衛生服を着用しているので判別できませんが、左図中のどれか1人が私です。もう少しで、片側(A side)にインストール完了です。関畑は9月上旬まで滞在予定なので、TPCグループへもっと 活発に参加していきたいです。

2019年5月(関口)

物理解析

郡司研教務補佐員の関口です。

私は、ALICE実験を用いた陽子+鉛衝突の物理解析を行っています。QGPは鉛+鉛衝突のように大きな系でないと生成されないと考えられて来ましたが、陽子+鉛衝突でも鉛+鉛衝突と同様の集団運動が観測されました。私は、陽子+鉛衝突における集団運動の起源がQGP由来なのか衝突初期の効果なのかを探る研究を行っています。

5月にはALICE実験内での物理解析の結果検討会議が行われており、結果をまとめてALICE実験の承認を得ようとしているところです。

2019年4月(関口)

新年度スタート

郡司研教務補佐員の関口です。

新年度を迎え、新たにポスドクの関畑大貴さんと修士1年生の清水夏輝さんが新たなメンバーとして加わりました。

4月20日には、原子核科学研究センターの一般公開を行いました。

我々は、高エネルギー重イオン衝突研究内容や我々が開発を行って来た検出器開発についてのポスター発表やガス電子増幅器のデモンストレーションを行いました。861名もの方々に来訪していただき、大盛況でした。理系を目指そうかと考えている女子学生達にもたくさん来ていただきました。物理を志す理系女子が少しでも増えてくれたら嬉しいです。

2019年3月(林)

ALICE-TPC増強計画の進捗

郡司研ポスドクの林です。3月に1ヶ月ほどCERNへの出張してきました。

Point 2ではいよいよTPCがALICE検出器群から取り外され、地上に戻ってきました。ケーブル類、RCU2などの読み出しカード、チェンバーが取り外され、新しいチェンバーのインストールに向けた準備に入ります。

(こちらで動画が見られます)


GIF++(Gamma Irradiation Facility)でのチェンバーのテストも着々と進み、36個大小新しい読み出しチェンバーの準備が完了し、インストールを待つのみとなりました。


また3/25から3/29にALICE weekが行われ各検出器・解析作業部会からの報告などがあり、関口(Long-range correlation in p-Pb)、村上(neutral meson in p-Pb)、林(J/ψ in p-Pb)の解析結果も紹介されました。郡司さんはLHC-Run2のまとめとRun3に向けたビーム運用計画の報告をされました。


4/3-4/5にはベルゲン大学にて行われたJ/ψ解析グループワークショップに参加し陽子鉛衝突データ解析の進捗について報告と議論を行いました。


春の物理学会では、郡司さん、関口さん、村上さんが口頭発表を行いました。


2019年2月(郡司)

ALICE実験の解体作業と2030年以降のALICE計画

いよいよ、中央領域の主検出器の解体作業が始まりました。ビームパイプから最も近いシリコン検出器(ピクセルx2、ドリフトx2、ストリップx2)の取り外し行われました。その後には、TPCの取り出し作業の準備が進められました。また、カロリメータ(PHOS, EMCal, DCal)の取り外しの準備も進められています。

3月始めに筑波大学で「前方物理と前方カロリメータ検出器技術に関する国際ワークショップ」があります。郡司は、2030年以降の前方での物理と2030年以降のALICE実験案に関する発表を行います。この研究会に向けて、前方での検出器群案の策定や要求仕様に関する検討を進めています。あくまでもbrainstreaming+議論をトリガーするための講演です。

林はJ/psiの解析を進めています。関口と村上も来月の学会に向けて解析を進めています。

2019年1月(郡司)

ALICE実験の解体作業とEvian workshop

1月も解体作業が進んでいます。前方方向のmini-frameが外されたり、TPCが収まるDelphi frameが地下に運ばれたり、と順調に進んでいます。

郡司は、1月末にCERNに出張して、2018年のALICE実験データ収集のまとめと課題を議論するワークショップを開催しました。副ランコーディネータとしてのお仕事です。また、その後に、Evian workshopに参加しました。これはCERN加速器に関するワークショップで、injectorからLHCに至る全加速器システムとその運転を支える技術(RF, collimator, power converter, cryogenics, protection system, etc)を議論します。2015-2018年のRun2期間の運転状況とLS2の高度化を議論しました。ちなみに、2021-2023年のbeam opticsに関する検討がすでに始まっています。私は、次にランコーディネーターとして、ALICE実験を代表して、加速器チームと議論を行なっています。

2018年12月 (郡司)

ALICE実験の改修作業開始!

LHCの長期改修期間(2019-2020)に、ALICE実験は大規模な測定器の高度化計画を遂行します。内側のシリコン測定器の交換(新しいMAPS技術によるピクセル検出器7層をインストールします)、TPC測定器の読み出しチェンバーの交換(ワイヤー増幅からGEM増幅に変わります)、前方ラピディティー方向にシリコン測定器の新規建設、トリガーV0カウンターやT0カウンターの統合が主な内容です。また、この高度化に伴って、DAQシステムも刷新されます。デッドタイムレスの連続読み出しとリアルタイムの高速データ処理がその柱です。

この改修作業に向けて、ALICE実験は、実験エリアを解放し、既存の測定器の取り外し作業を開始しました。

左の図上は、ALICE実験エリアに繋がるフロア(100m地下)を地上から眺めたものです。通常は、ビームを遮蔽するコンクリートブロックがありますが、それが取り除かれました。ここから測定器の搬出と搬入を行います。12/12にL3磁石のドアが開きました(左下)。これから、シリコン検出器などの取り出し作業が始まります。

2018年11月 (郡司)

LHC Run2最後の重イオンラン

予定より5日遅れて、LHC Run2期間最後のPb-Pbが開始しました (11/8)。右上はその時のARC (ALICE Run Control Center)の様子です。運転責任者(主・副ランコーディネーター)、トリガー責任者、DAQ/HLT(ハイレベルトリガー)/DCS(検出器制御システム)/CTP(トリガーシステム)のセントラルシステム、各測定器のエキスパートが現場で調整を行っています。


LHCが供給するbeam (transverse coupling)に色々と問題がありましたが、LHCは当初の目標に近い0.9 /nbのルミノシティーをALICEに供給しました。ALICEも最初の頃はDAQに問題がありましたが、順調にデータを取得しました。Central Barrelにおいては、MBは2015年と同程度、中心衝突や非中心衝突事象は2015年の3-8倍近くを取得しました。ミューオンやカロリメータによるレア事象も2015年の倍近くを取得しました。8kHzの衝突レートだったので、TPC測定器の空間電化効果によるドリフト領域の歪みが懸案事項でしたが、予想よりも歪みが小さく、非常に良質のデータが取得できました。解析が楽しみです。郡司は、副ランコーディネーターとして、現場でのデータ収集を統括しました。


上から2枚目の図は、最終日(12/2)のLHC page1で、ビーム輝度と衝突ルミノシティーの様子を示しています。その下は、LHC Run2のまさに最後の瞬間におけるARCの様子です。全ての人が、イベントディスプレイを眺めながら、最後の瞬間を迎えました。


右下の図は12/3夜に行われたEnd of Run Partyの様子です。ビールとワインとピザを皆で楽しみ、労をねぎらいました。


郡司は、副ランコーディネーターでARCに缶詰状態でした。林は、J/ψの解析を進め、様々な国際会議(ATHIC2018会議、QNP会議)での成果報告を行いました。関口は、コペンハーゲンのNiels Bohr instituteに出張し、p-Pb衝突での長距離相関の解析を進めました。関口もATHIC2018で成果報告を行いました。村上は、CERNに長期出張中で、p-Pbでの光子測定の解析を進めると同時に、GEM-TPCアップグレードを進め、特に実機GEMのQAやチェンバーのGIF++でのγ線照射テストを行いました。